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ロタウイルス

 レオウイルス科の一属。二本鎖のRNAゲノムをもつコアが、二重のカプシドに包まれたウイルス。内部カプシドのVP6蛋白質がA~Gの抗原群を決定し、外部カプシドのVP7とVP4蛋白質が1~14の血清型を決定する。ヒトに経口感染して下痢症を起こす。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 潜伏期間は1から3日、突然の嘔吐から始まり、遅れて下痢が出現するのが典型的です。発熱を伴うこともあります。発症から24時間たっても食欲がもどらず、ぐったりしている場合は点滴や入院が必要になることがあります。下痢は1週間以上続くことがあります。下痢がおさまってもしばらくはウイルスが便から排泄されますが、便に形が出てきて1日1から2回程度に回数が減少している場合は通園・登校を認めるのがふつうです。排泄されるウイルス量が多いと便が白色に見えることがありますが必発ではなく、白色便は他の感染性胃腸炎でも見られることがあります。6ヶ月から2歳をピークに、5歳までにほとんどの人が一度は感染すると言われています。感染を繰り返すたびに症状は軽くなります。本邦では主に2月から4月にかけて流行が見られます。
 合併症としては、インフルエンザ、ヒトヘルペスウイルス6型(突発性発疹症)にくらべると少ないですが、脳炎や脳症の原因になることが知られています。他の胃腸炎でも起こりますが、「軽症胃腸炎にともなうけいれん」の頻度がやや高いと言われています。「軽症胃腸炎にともなうけいれん」は下痢が始まって1から2日目におこることが多く、しばしば群発(短時間で何回も繰りかえす)します。

 ロタウイルスはAからGの7つの血清群に分類されますが、このうちヒトに感染するのは大部分がA群で、時にC群が見られます。A群はさらに表面の構造蛋白VP7(G蛋白)のG型分類、VP4(P蛋白)の遺伝型によるP遺伝型分類に分けられ、G型P[遺伝型]のように表記されます。アメリカ合衆国でよく見られるA群ロタウイルスはG1P[8]型が多く、G2P[4]型などがそれに続きます。本邦で利用できるロタウイルスワクチンは2種類ありますが、ロタリックスはもっとも頻度の多いG1P[8]に対する単価ワクチンで、ロタテックは他にも複数のタイプを含む多価ワクチンになっています。それぞれまったく違った考え方で作られたワクチンなので、単純に単価と多価だけで比較することはできません。2020年10月1日からロタウイルスワクチンは定期接種になります。

 まとめ:ロタウイルスは主に乳幼児の感染性胃腸炎(胃腸風邪)の原因で、時に重症化することがあり、ワクチンでの予防が行われている。

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