top of page
感染症 - メニューへ戻る

ギョウチュウ

 ヒト、特に小児に高率に寄生する線虫で、世界各地で見られる。成虫は雄2~5mm、雌8~13mmの白色紡錘形で、盲腸に寄生し時に小腸下部にもみられる。雌成虫は成熟すると夜間患者の睡眠中に大腸を下って、肛門外に出て、周辺に約1万個の卵を産み付けて死亡する。卵は約50~30μm、無色の柿の種形で数時間で感染可能となり、患者の手指、衣類、塵などを介して患者や周囲のヒトに経口感染する。卵は小腸上部で孵化し盲腸に移動し2~3週で成虫となり、雌は約50日後に産卵を行う。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 蟯虫は世界中で一般的にみられる寄生虫感染症で、米国では4000万人が感染していると推計されています。感染者のほとんどは何も症状がなく、あっても肛門周囲にかゆみを覚える程度ですが、時にそのかゆみが不眠を引きおこすこともあります。感染者に蟯虫寄生による栄養障害はふつうなく、米国では通常症状のある人だけが治療対象になります。治療にはコンバントリンという抗寄生虫薬を用います。家族内感染の率が高いので、家族全員がコンバントリンを10日から2週間あけて2回の内服が一般的ですが、日本寄生虫学会からは2から3週間間隔で3回の内服が推奨されています。治療開始2ヶ月程度で連日2日間検査を行い、陰性を確認します。蟯虫の虫卵は室内環境で数週間感染力を持ち続けるため、適正に治療を行っても治療前に排泄された虫卵による再感染がおこることがあります。コンバントリンによる駆虫開始とともに、衣類や寝具、その他のものを頻繁に洗浄し、周囲に掃除機をかけることで再感染を防ぐことができます。蟯虫の虫卵は日光に弱く、天日干しも効果的です。蟯虫の虫卵検査が陽性であっても、プールを禁止にする必要はありません。地域差はあるものの、本邦では2000年以降、蟯虫検査における虫卵陽性率がおおむね1%未満でさらに低下していることから、2016年度で蟯虫検査は廃止されることになりました。病院検査部では、独自に検査を継続している施設もあります。

 まとめ:蟯虫はふつう無害である。本邦での寄生率は低い状態で推移している。

bottom of page