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赤痢アメーバ

 エントアメーバ・ディスパーが独立腫として認められたことにより、現在ではエントアメーバ・ヒストリティカ、即ち病原性を有する種を指す。このアメーバの生活環は栄養型(栄養体)を嚢子から構成される。核の性状は特徴的で、点状のカリオソームが中心に位置しており、核膜直下に辺縁クロマチンがみられる。栄養型の運動は他のアメーバに比べての活発で、細菌などの捕食能力は高い。消化管寄生アメーバの中で本種のみが大腸粘膜内に侵入する能力を有しているのでヒトに対して病原性を示す。嚢子は大腸腔内で形成される。当初は一核の未成熟嚢子であるが、最終的には四核を有する成熟嚢子となる。この成熟嚢子のみが感染能力を有する。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 赤痢アメーバはエントアメーバ科に属する原虫で、全世界に分布しており、熱帯の発展途上国を中心に世界人口の10%が感染していると考えられています。しかし、この中には病原性のないエントアメーバ・ディスパーが含まれており、その比率はおよそ9割程度、つまり、病原性の赤痢アメーバ、エントアメーバ・ヒストリティカは全人口の1%に感染していると推定されています。国内では年間数百例の報告があり、一部のコミュニティ内での感染、食品からの感染が主な経路となっています。エントアメーバ・ヒストリティカによる腸管アメーバ症(アメーバ赤痢)の潜伏期間はふつう2から3週間ですが、大半が無症候性病原体保持者となり、周囲に感染を拡大させます。世界でエントアメーバ・ヒストリティカが蔓延しているのは無症候性病原体保持者の割合が多いからだと考えられます。1年間に無症候性病原体保持者のうち数%から10%が発症すると考えられています。腸管アメーバ症の症状は粘血の混じった下痢が数回見られるものから、しぶり腹を伴って1日20回にもなるものまで多様です。多くの場合、数週間程度の周期で良くなったり悪くなったりを繰り返し慢性に経過しますが、一般に全身状態は保たれ、症状の強い細菌性赤痢にくらべて日常生活が阻害される度合いは小さいです。肝膿瘍を合併しない限り発熱があることもあまりありません。肝膿瘍に代表される腸管外アメーバ症は赤痢アメーバによる症状の中で1%未満と頻度は少ないですが、様々な臓器に病変を形成することがあり、それらは必ずしも消化器症状を伴わないために診断を難しくします。抗寄生虫薬によって治療します。食品をよく加熱することによって予防できます。

 まとめ:エントアメーバ・ヒストリティカ(赤痢アメーバ)は食中毒の原因となり、慢性に経過する感染症を引きおこす。食品をよく加熱することによって予防できる。

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