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感染症 - メニューへ戻る

肝吸虫

 後睾吸虫科に属する扁形動物・吸虫類。肝吸虫症の病原体で魚を食べる哺乳類の肝内胆管系に寄生する。極東に広く分布し、わが国での流行地は岡山県南部、琵琶湖沿岸など。成虫は柳の葉状で大きさ約15×4mm、樹枝状の精巣2個が後体部で前後に並ぶ。虫卵はナスビ型で長径約30μm。発育には2つの中間宿主が必要。終宿主はヒトの他に多くの哺乳動物。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

​ 当院の位置する滋賀県では、古来より淡水魚とのかかわりが深く、第一中間宿主がマメタニシであることが発見された土地でもあり、肝吸虫症の研究において注目すべき地域です。最近では大規模な疫学調査は行われていませんが、1960年に行われた研究では、湖畔に近づくにつれて感染率が増え、地域によっては半数以上の人から肝吸虫症が見出されたと報告されています。現在では第一中間宿主であるマメタニシの生息域が大幅に減少していますが、琵琶湖周辺ではネコやネズミなどを終宿主にして肝吸虫の生活環が維持されていると思われます。第二中間宿主はコイ科の淡水魚で、モツゴ、ホンモロコ、タモロコなど多数が知られています。ヒトはこれら第二中間宿主の生食、もしくは加熱が不充分なものを摂食して感染します。コイは感染率は低いものの生食することが多く注意が必要だと考えられています。小数寄生では無症状ですが、多数では胆管閉塞をきたし、食欲不振、倦怠感、黄疸などといった症状が出現、進行すると肝硬変の原因になります。成虫の寿命は20年と長いため、感染機会が多ければ多いほど多数寄生となりやすいと考えられます。抗寄生虫薬によって治療します。

 まとめ:肝吸虫は淡水魚による食中毒の原因となる。琵琶湖周辺では特に注意が必要である。食品をよく加熱することによって予防できる。

 ヒトの肝臓に寄生するものには他に肝蛭があります。これは中間宿主をヒメモノアラガイとし、終宿主はウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ヒトなどです。水田の水草や駆虫処理が充分にされていない飼料作物に付着したメタセルカリア、または牛レバーに寄生した幼若な虫体を経口摂取して感染します。肝蛭が寄生しているレバーはふつう市場に出回る前に廃棄されます。同じように反芻動物の膵管に寄生する膵蛭という種類もおり、これは第一中間宿主をオナジマイマイなど(カタツムリの一種)、第二中間宿主をササキリ(キリギリスの一種)とします。

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