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白癬菌

 小胞子菌属、表皮菌属とともに皮膚糸状菌を構成する真菌の一属。ケラチンを栄養源としているので、表皮角層、爪、毛包内角質および毛に感染し病変を生じる。わが国で分離される皮膚糸状菌は白癬菌属がほとんどである。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 皮膚糸状菌は30種類以上の菌種からなるケラチン好性真菌のグループで、トリコフィトン(白癬菌)属、ミクロスポルム(小胞子菌)属、エピデルモフィトン(表皮菌)属が含まれますが、後二者は本邦ではまれなため、皮膚糸状菌症と白癬はほとんど同義語で扱われています。一般的な皮膚科では10%程度の割合を占めるありふれた疾患ですが、小児で問題となるのは主に頭部白癬と、乳幼児のおむつの内側にできる体部白癬です。白癬には明らかな潜伏期間はなく、白癬菌が定着し、何らかの要因で宿主の免疫力をしのぐと発症します。
白癬菌属は下記のような症状を引きおこします。
・頭部白癬
 頭部白癬には頭部浅在性白癬(しらくも)、ケルズス禿瘡、ブラック・ドット・リングワームなどがあり、10歳以下が好発年齢です。頭部浅在性白癬では、頭皮に辺縁のはっきりしたやや赤みのある円形の脱毛斑ができ、落屑を伴います。病変部に残っている毛も弱く、容易に抜けてしまいます。ケルズス禿瘡は頭部白癬に誤ってステロイド外用薬などを塗布することで生じることが多く、膿瘍の形成、排膿などが見られ、圧痛を伴う頭部白癬の重症型です。発熱、リンパ節の腫脹、白癬疹(白癬菌に対するアレルギー反応で、全身に小丘疹が多発する)といった全身症状を伴うことがあります。ケルズス禿瘡を引きおこすものは主に、ミクロスポルム・カニス(イヌ小胞子菌、宿主はイヌ、ネコなど)、ミクロスポルム・ジプセウム(石膏状小胞子菌、土壌に存在)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(毛瘡白癬菌、宿主はウサギ、モルモットなど)などがあります。ブラック・ドット・リングワームはトリコフィトン・トンズランスなどによって生じ、毛包に残った毛が黒い点状(ブラック・ドット)に見えるためにそう呼ばれます。頭部白癬の場合は外用薬は症状を悪化させる可能性があるため使用せず、抗真菌薬の内服を行います。薬剤は症状がよくなってからさらに2週間(全体の投与期間はおおむね4週間、ミクロスポルム・カニスの場合は6から8週間)継続することが推奨されています。内服中は副作用が出ていないかチェックするために定期的な採血が必要です。
・体部白癬
 体部白癬は丘疹、紅斑などが中心部治癒傾向を示すことによって輪状の皮疹となります。原因の多くはトリコフィトン・ルブルム(紅色白癬菌)、トリコフィトン・トンズランス、トリコフィトン・メンタグロフィテスです。体部白癬のある人は頭部白癬を合併していることがあります。おむつの内側は白癬菌が増えやすい環境で、そういった部位に体部白癬が生じた場合、家族に足白癬(いわゆる水虫)の患者がいることが多いと言われます。おむつかぶれだと思いステロイド含有軟膏を塗布すると悪化しますので、おむつかぶれの治りが悪い、悪化する場合は受診が必要です。抗真菌薬の外用薬によって治療します。
 他に、手白癬、足白癬、爪白癬などがあります。いずれも小児ではまれですが、手足の白癬はアトピー性皮膚炎などの湿疹とまぎらわしいことがあります。爪白癬は外用薬での治療は難しく、抗真菌薬の内服が必要となります。
 診断に迷う場合などは皮膚科の受診を勧めさせて頂くことがあります。

 まとめ:白癬菌は皮膚糸状菌症の原因となることがある。抗真菌薬によって治療する。

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