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感染症 - メニューへ戻る

有鉤条虫

 円葉類に属するテニア科の条虫。雌雄同体で体長は2~3m、頭節には4個の吸盤と先端には22~32本の小鉤をもつ顎嘴がある。片節数は1000以下である。本虫はヒトを固有宿主としているが、またヒトが中間宿主にもなりえる。ブタ肉内の嚢尾虫の経口摂取により、小腸上部、特に空腸粘膜に頭部を吸着させ約3ヶ月で成虫になる。その虫卵は球形で幼虫被殻は厚く、淡黄色、放射状構造にて内部に六鉤幼虫を包蔵する。
(医学書院 医学大辞典)

 ヒトに寄生するテニア属の条虫には、ブタを中間宿主とする有鉤条虫、ウシを中間宿主とする無鉤条虫、また、2010年以降に本邦でも存在が確認されたアジア条虫などがあります。有鉤条虫の幼虫は有鉤嚢虫と呼ばれ、ヒトが加熱が不充分な豚肉などから虫体を摂取することで感染します。虫体はヒトの小腸で成熟し、受胎片節(虫卵を多数含んだ片節)の排泄、下痢や便秘といった軽い消化器症状を引きおこします。しかし、汚染された食品などから虫卵を摂取してしまった場合にはヒトも中間宿主になることがあり、体内で幼虫が臓器に移行して有鉤嚢虫症を引きおこすことがあります。症状は感染した臓器によってことなり、特に中枢神経、眼に感染した場合には命にかかわることもまれではありません。有鉤嚢虫症では抗寄生虫薬の投与による虫体破壊によってアレルギー症状の出現、炎症が悪化することがあるため、必ず入院管理の上でステロイドを併用、特に脳嚢虫症については適切な治療方法の選択にはきわめて慎重な判断が必要です。治療には後述する自家感染を回避するために成虫の消化管からの排除が先立って検討されます。成虫の感染、有鉤条虫症が疑われる場合は虫体の破壊によって自家感染する(虫卵が腸管内に散布され、有鉤嚢虫症が引きおこされる)可能性があるため、本邦では抗寄生虫薬を使用せず、下剤を用いた駆虫方法がガイドラインに記載されています。本邦では有鉤条虫症、有鉤嚢虫症ともに海外感染を除いて近年報告はありませんが、世界的には脳嚢虫症が主要なてんかんの原因を占めている地域もあります。反対に、宗教上の理由で豚肉の摂取がないイスラム地域では発生は少ないです。流行地域では充分に加熱された食品を摂取することが大事です。

 まとめ:有鉤条虫(有鉤嚢虫)はヒトに感染する寄生虫のひとつである。よく加熱した食品を摂取することで予防できる。

アジア条虫

 アジア条虫はアジア地域に広く分布する条虫の仲間で、2010年に初めて本邦でも感染が確認され、すでに定着している可能性が指摘されています。ブタを中間宿主とすることが有鉤条虫と似ていますが、筋肉ではなく肝臓に主に寄生します。本邦での感染報告も多くがブタの生レバーの摂食によるものと報告されています。

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