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日本住血吸虫

 東アジアに分布するヒト寄生性住血吸虫。1904年に桂田富士郎がネコで発見記載し、同年に藤浪鑑が人体寄生虫を報告した。さらに宮入慶之助らが1913年に中間宿主貝を発見した。雌雄異体で、雌が体長22mm、雄が8~19mmの糸状の形態をもつ。体表は平滑で、雄の7個の精巣、雌の卵巣の位置などにより他の住血吸虫と鑑別できる。虫卵は幼虫を包蔵し、卵殻に蓋はなく、他の住血吸虫のような特有の突起を欠く。糞便とともに排出された虫卵からは水中でミラシジウムが遊出し、中間宿主のミヤイリガイに侵入する。セルカリアに発育すると再び水中に遊出し、終宿主に経皮感染する。血行性に宿主体内を移行し、腸管膜静脈から肝門脈で産卵を開始する。ヒト以外にもイヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ネズミなど多くの保虫宿主が自然界に存在する。本虫は一属一種と考えられるが、日本、中国本土、フィリピン、台湾でそれぞれ固有の中間宿主が存在し、宿主選択性や臨床症状などに大きな違いが存在する。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 日本住血吸虫は哺乳類に寄生する寄生中で、以前は水田を中心に患者が見られていましたが、現在は中間宿主であるミヤイリガイの駆除が徹底的に行われた結果、1978年以降、患者の発生は見られていません。2から3週間の潜伏期ののち、倦怠感、食欲不振、腹部違和感といった症状が現れることがあります。感染を繰り返して慢性に経過した場合は虫卵が血管を閉塞することによる肝硬変へ進展することがあり、肝癌の発生や、肝不全で死亡することもあります。かつて流行地であった一部の地域ではミヤイリガイの生存がまだ確認されています。

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