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マラリア

 原生動物・胞子虫類のプラスモジウム属の原虫が起こす伝染性熱性疾患。病原体である原虫そのものも指す。ヒト以外の動物にもみられる。ヒトのマラリアには熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵型マラリアがある。流行地での3大症状は発熱、脾腫、貧血である。血液中の原虫を検査・確認して診断する。腸チフスなど熱性疾患との鑑別が必要。早期診断、投薬治療でおさまるが、遅れると致命的となりうる。特に日本人のように本症への免疫力のない人の熱帯熱マラリアの初感染が危険である。第二次大戦後に世界保健機関のマラリア根絶計画で温帯地の三日熱マラリアは減少したが、悪性の熱帯熱マラリアは未だ広く熱帯を中心に分布。世界的には現在最もアフリカの子供を中心に年間延べ3億~5億人が感染して高熱に冒され、毎年150万~270万人の本症による死亡が推定されている。マラリア原虫はハマダラカで有性世代をみるのでカの寄生虫と考えられる。カの吸血を受けてスポロゾイトに感染すると肝細胞で無性増殖し、メロゾイトが赤血球に感染し、発育、無性分裂してシゾントとなり赤血球を破壊していく。一部は雌雄の生殖母体となり、カに吸われて合体・融合し有性生殖をする。融合体からオーキネートになり、注腸にオーシストを形成し、減数分裂してスポロゾイトを産生する。
(医学書院 医学大辞典 一部追記、省略)

 マラリアはメスのハマダラカに吸血されることによって感染するプラスモジウム属に属する原虫による感染症です。プラスモジウム属には200種類程度が知られており、脊椎動物で無性生殖、昆虫で有性生殖を行うため、昆虫が終宿主、他の生物は中間宿主ということになります。ハマダラカで有性生殖を行ったマラリア原虫はスポロゾイトとして唾液腺に集まり、カの吸血とともに宿主の体内に侵入、感染を引きおこします。ヒトに感染する代表的なマラリアには、三日熱マラリア(病原体はプラスモジウム・ビバックス)、四日熱マラリア(同じくプラスモジウム・マラリエ)、二日熱マラリア(同じくプラスモジウム・ノウルジ、サルマラリアとも呼ばれます)、卵形マラリア(同じくプラスモジウム・オバーレ)、熱帯熱マラリア(プラスモジウム・ファルシパルム)の5種類があります。それぞれ少しずつ潜伏期間がことなり、ふつう2週間からそれ以上、予防内服をしていても発症した場合には2ヶ月以上のこともあります。三日熱マラリア、四日熱マラリア、二日熱マラリアの名称の違いは発熱周期の違いからきていますが、いずれも最初は連日発熱します。発熱周期の違いは原虫が赤血球内で発育するのにかかる時間と関係しており、成熟した原虫が赤血球を破壊する時に熱が出ます。発熱以外に頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛といった症状が見られることがあります。卵形マラリアも三日熱マラリアと同じような発熱周期を取りますが、熱帯熱マラリアの場合は原虫の赤血球内での発育が同調しないため周期性はなく、毎日発熱が見られます。熱帯熱マラリアは重症で、適切な治療が行われない場合、数日から1週間程度で致命的になることがあります。抗マラリア薬によって治療します。
 マラリアの流行地へ渡航する際には抗マラリア薬の予防内服が認められています。患者の9割が5歳未満の子どもであること、重症化や死亡の危険が高いことから、「日本の旅行者のためのマラリア予防ガイドライン」ではそもそも流行地への子どもの帯同を避けるようにと勧告されています。やむをえず子どもを連れていく場合、おとなだけで渡航する際にも、あらかじめトラベルクリニックでの相談が必要です。

 まとめ:マラリアは熱帯、亜熱帯の地域で見られる代表的な原虫感染症である。流行地域へ渡航する際には予防内服が認められている。

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