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感染症 - メニューへ戻る

クリプトスポリジウム

 アピコンプレックス門、胞子虫網、真コクシジウム目に属する消化管寄生原虫。ヒトや家畜・家禽を含む脊椎動物に広く感染がみられる。哺乳類では腸管に寄生するCryptosporidium hominisやC. parvumと胃に寄生するCryptosporidium mulisなどがあり、鳥類や爬虫類、魚類に寄生する種もある。消化管粘膜上皮細胞の膨化した微絨毛の中に寄生して無性生殖と有性生殖で増殖、オーシストは4個のバナナ状のスポロゾイトと1個の残体を包蔵し、スポロシストはない。C. parvumの生活史は、経口摂取されたオーシストが小腸に達するとスポロゾイトが遊離して微絨毛に侵入、虫体は微絨毛の膜に覆われた球形の栄養型になり、無性生殖(シゾゴニー)で8個のメロゾイトを形成、遊離したメロゾイトはこれらの増殖過程を繰り返す一方、あるものは有性生殖で雌雄の生殖体になり、受精してオーシストになる。オーシストは微絨毛内で成熟し4個のスポロゾイトを形成、放出されたスポロゾイトはまた増殖過程を繰り返す(自家感染)。成熟オーシストの多くは糞便とともに体外へ排出され、ほかの個体への感染源になる。
(医学書院 医学大辞典 一部省略、改変)

 クリプトスポリジウムによる感染の報告は1976年に初めて報告され、国によって感染状況はことなりますが、世界中に見られる原虫感染症です。クリプトスポリジウムのオーシストは凝集、堆積、濾過を行う通常の浄水処理では除去できず、塩素消毒にも強いため、汚染された飲料水や水道水が主な感染源となります。また、プールを介した感染も懸念されています。1993年に米国ウィスコンシン州では40万人をこえる未曾有の集団感染がおこりました。本邦でも散発的な集団感染の報告が見られますが、これは個々に発生している症例が急性腸炎などとして処理されているためで、正確な感染状況を表しているわけではないと考えられます。潜伏期間は数日から10日程度、主な症状は下痢で、下痢は軽いものから1日に20回以上の激しいものまで様々な程度で見られます。他に腹痛、吐き気、発熱、倦怠感などを認めることがあります。大人よりも子どもの方が症状が強く出る傾向にあります。免疫力が正常な人では1から2週間で自然に治癒します。また、無症状でオーシストの排泄のみを認めることもあります。特異的な治療法はなく、対症療法が行われます。
 クリプトスポリジウムのオーシストは湿った環境では数ヶ月感染力を持ち続けると言われています。飲用水では1分の沸騰で死滅します。

 まとめ:クリプトスポリジウムは飲料水などによる食中毒の原因になることがある。よく加熱することで予防できる。

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