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クリプトコッカス

 クリプトコッカス科に属し、出芽で増殖する酵母様不完全真菌の一属。普通、莢膜をもつが、仮性菌糸を形成しないのがカンジダ属と異なる。ヒトにクリプトコッカス症を発症させるクリプトコッカス・ネオフォルマンスが含まれる。
(医学書院 医学大辞典)

 クリプトコッカス属に属する真菌は、空気中や土壌などいたるところに存在し、特に鳥のフンに汚染されている土壌では高頻度で分離されます。これは、鳥類の糞便にはクリプトコッカスの増殖に必要なクレアチニンが多く含まれているからです。鳥類は体温が高いため、鳥類の体内ではクリプトコッカスは増殖できず、鳥類は一般的には感染しないと考えられています。ヒトに病原性を示すクリプトコッカスは莢膜の抗原性の違いからA、B、C、D、ADの5つの血清型に分類されますが、血清型A、D、ADは本邦で一般的に見られるクリプトコッカス・ネオフォルマンス、血清型B、Cは健常人でも重篤な症状を引きおこすことがあるクリプトコッカス・ガッティに相当します。クリプトコッカス・ガッティはかつては熱帯、亜熱帯地域のみで見られていましたが、2007年に初めて本邦でも感染例が確認され、今後の増加が心配されています。クリプトコッカスはヒトの他に、ネコ、イヌ、フェレット、羊、コアラなどに感染することが知られています。
クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ガッティは下記のような症状を引きおこします。
・肺炎
 病原性クリプトコッカスはヒトに吸い込まれると、肺に病変を形成することがあります。肺への感染のみでは無症状のことが多く、免疫力が正常な人では自然治癒することもあります。免疫力が低下している人などでは、時にこの肺の病巣からクリプトコッカスが播種され、髄膜炎を引きおこすことがあります。抗真菌薬によって治療します。
・髄膜炎、脳炎
 クリプトコッカス性髄膜炎、脳炎は健常者ではまれですが、頭痛、発熱、無気力、昏睡、人格変化、記憶障害といった症状を引きおこします。また、神経の障害を残すことがあり、命にかかわることもまれではありません。抗真菌薬によって治療します。
他に、皮膚や関節、他の諸臓器にも播種して病変を形成することがあります。

 ハトの糞便中のクリプトコッカス・ネオフォルマンスは2年間感染性を持ち続けることがあると言われています。免疫力に問題のある人たちが治療を受ける医療機関の周囲などでは、ハトなどの鳥類にエサを上げたりしないように配慮する必要があります。

 まとめ:クリプトコッカスは時に肺炎や髄膜炎の原因になることがある。免疫力の低下している者では特に注意が必要である。

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