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感染症 - メニューへ戻る

エキノコックス

 円葉目、テニア科、エキノコックス属の重要な人獣共通寄生条虫で、主に北緯40°以北の北半球に分布するが、近年の環境破壊に伴い、南下している、北海道に広く流行し、本州への流行拡大が懸念されている。終宿主はキツネ、イヌなど、主にイヌ科の動物で、好適中間宿主は、エゾヤチネズミ、ハタネズミなどの齧歯類で、ヒトは非好適中間宿主である。成虫はキツネなどの小腸に寄生し、体長は約2~3mmで、3~5片節からなる。産出された虫卵は六鉤幼虫を入れ、中間宿主に経口的に摂取され、主に肝臓で幼虫形である多包虫となり、原頭節が完成する。それをキツネなどイヌ科の終宿主が経口的に摂取し、その小腸で成虫となる。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 本邦で問題となっているエキノコックス・マルチロキュラリス(多包条虫)は、もともと北海道に分布していたものではなく、20世紀に入り北方諸島から持ち込まれたものだと考えられています。現在では青森県が北海道に次いで患者数が多く、2014年4月では愛知県の野犬から多包条虫の病巣が確認されており、本州への感染拡大が懸念されています。終宿主はキツネやイヌで、ヒトは中間宿主となり、虫卵を摂取することでのみ感染します。潜伏期間は数年から十数年と言われていて、肝臓に嚢胞を形成し、徐々に拡大、腹痛、黄疸、肝機能障害などが現れます。嚢胞が破裂すると内部の幼虫が散布されて別の場所に病変を形成することがあり、特に中枢神経への転移は非常に重大です。早期発見され、肝臓の病巣を切除できた場合は比較的良好な治療成績がありますが、進行した場合の予後は不良です。北海道では小学校3年生以上の希望者を対象に、5年毎の本症の検診が推奨されています。キツネには近付かない、イヌを放し飼いにしない、野外から帰宅したら手洗いを充分に行うなどの対策によって予防できます。

 まとめ:エキノコックス・マルチロキュラリスは慢性に経過する寄生虫感染症を引きおこすことがある。感染予防が重要である。

単包条虫

 円葉目、テニア科、エキノコックス属の世界的に広く分布する重要な人獣共通寄生条虫である。国内にも分布する。終宿主は、イヌ、オオカミなどのイヌ科動物で、中間宿主は、ウシやヒツジなどの家畜である。ヒトは好適中間宿主で、単包虫症を惹起する。完成した単包虫は時に小児頭大にもなり、中に大量の包液を入れ、さらに包虫砂と称される完成した原頭節を含む繁殖胞が認められる。虫卵は、他のテニア属条虫卵や多胞条虫と区別できない。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

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