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破傷風菌

 偏性嫌気性グラム陽性桿菌で、円形で端在性の芽胞をもつ。芽胞が菌体より大きいので太古のバチ状に見える。自然界、特に土壌中に芽胞の形で生存している。芽胞に汚染された土が傷口に入り、他の化膿菌により組織が嫌気状態になると、芽胞が発芽して毒素を産生する。産生された破傷風毒素は中枢神経に伝達されて神経症状を起こす。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 破傷風菌は熱や乾燥に強い芽胞の形で、世界中の土壌や家畜などの糞便中にふつうに存在しています。日常生活の中で、破傷風菌との接触を絶つことは不可能です。にもかかわらず、もっとも強力とされるボツリヌス毒素に次ぐ毒性を持つ毒素、テタノスパスミンを産生し、現在においても致死率の非常に高い感染症である破傷風を引きおこします。破傷風菌の芽胞は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)でも生き残ります。
 破傷風菌は下記のような症状を引きおこします。
・破傷風
 破傷風菌は2から50日の潜伏期間(ふつう1週間前後)ののち、口が開きにくい、顔が苦笑するようにひきるつ、肩がこわばるなどの症状から全身痙攣にいたる重篤な神経症状が出現します。これは、テタノスパスミンが運動神経の抑制をさまたげるために生じます。強い強直性痙攣により背中が弓なりに反ってしまう現象(後弓反張)が生じることがあります。胸壁の硬直、声門の攣縮から致死的な呼吸困難におちいることもあります。潜伏期間が短いほど重症と考えられていますが、とても些細な傷から破傷風菌に感染することもあるため、感染のきっかけが不明なことも多いです。治療は刺激を与えない静かな場所で集中的に行い、一度神経組織に結合した毒素は中和できないため、疑わしい場合は可及的速やかに抗菌薬、抗破傷風免疫グロブリンの投与が開始されなければなりません。破傷風菌は偏性嫌気性菌で酸素に触れるとたやすく死滅するため、破傷風が強く疑われる場合でも菌が検出されないことがしばしばあります。
 ワクチンが導入される1950年より前は年間2000人程度が感染し、80%程度が死亡していましたが、現在は1年間に100人前後で推移しています。患者はワクチンの効果が減弱する30歳以降に集中しており、ワクチンの追加接種が望まれます。
 発展途上国では汚染された器具でへその緒を切断することによる新生児破傷風が問題となっていますが、近年本邦での報告はありません。

 まとめ:破傷風は致死率の高い感染症で、日常で感染のリスクがある。ワクチンによって予防できる。

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