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百日咳

 偏性好気性グラム陰性小桿菌で、莢膜があるが芽胞は作らず鞭毛もない。百日咳の病原体でカタル期の患者の気管支分泌液から検出され、ヒトからヒトへと飛沫感染する。乳幼児がもっとも罹患しやすく、罹患後は通常免疫が得られる。菌が産生する易熱性胸膜抗原(K抗原)がビルレンス(毒力)に関係するほか、百日咳毒素、易熱性皮内壊死毒、赤血球凝集素などが病原性に関与している。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 百日咳はボルデテラ・パータシス(百日咳菌)、ボルデテラ・パラパータシス(パラ百日咳菌)を原因とする気道感染症です。パラ百日咳菌は百日咳毒素を産生しませんので、百日咳菌の感染よりは軽症となるのがふつうです。百日咳は世界中に見られ、どの年齢でもかかりますが、多くは小児で、特に生後6か月未満の乳児での重症化が問題となります。百日咳菌、パラ百日咳菌は呼吸上皮の繊毛に定着し、炎症を引きおこすことによって症状が出現します。潜伏期間は1から6週間(通常1週間程度)で、典型的には症状は3つの時期に分けることができます。まずはカタル期という咳や鼻汁といった感冒症状が続く時期が2週間程度あり、徐々に症状が強くなり、ひどい咳の出る痙咳期に入ります。痙咳期の咳の発作は夜間におこりやすく、短い咳が連続でおこり(スタッカート)、合間にひゅーっという音(笛音)とともに息を吸う発作が繰り返されます。これをレプリーゼといいます。しばしば咳で嘔吐が誘発されます。息ができないほどの咳が出るので顔面は紅潮、浮腫や点状出血、結膜出血、鼻出血が見られることがあります。発熱は微熱程度のことが多く、咳の発作のないときは症状に乏しいのが特徴です。乳児期早期では特徴的な咳がなく、息を止めているような無呼吸発作、チアノーゼ、けいれんから呼吸停止にいたることがあります。まれに脳症を合併することがあります。脳症については他項に書きます。こういった時期が2から3週間程度続き、症状は次第に改善傾向に向かいます。激しい咳の発作が減ってくる時期を回復期と呼び、数週間かけて咳は消失します。全経過が2から3ヶ月(約100日)にわたるため、百日咳と呼ばれます。抗菌薬や必要に応じてγグロブリン製剤などを使用します。生後3ヶ月から接種する四種混合ワクチンによって予防できます。

​ ワクチンを接種している場合は、かかっても低年齢のお子さんで強い典型的な症状が出ることはまれです。しかし、適切な抗菌薬を使用しても乾いた咳がしつこく残る場合は、診断を確実にするために採血を行うことがあります。

 まとめ:百日咳は長引く咳が特徴の感染症だが、乳児期、幼児期早期では命にかかわることがある。四種混合ワクチンによって予防できる。

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