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放線菌

 放線菌科のグラム陽性で不規則に染まる線条体を有する、非胞子形成、非運動性の通性嫌気性細菌の一属。健康な人の口腔内、消化管に常在する。ヒトに病原性をもっている放線菌としては、アクチノミセス・イスラエリイとアクチノミセス・ナエスランディイがある。病巣や膿汁中で黄色顆粒状の菌塊を形成するが、これは硫黄顆粒またはドルーゼと呼ばれる。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 放線菌の仲間には実に多様な菌種が含まれており、現在の分類では菌糸形態を取らないものが半数程度あります。放線菌網にはビフィドバクテリウム目に属する細菌、いわゆるビフィズス菌も属しています。環境中の分布では様々な抗生物質を産生するストレプトマイセス属に属する菌が大多数を占めています。ヒトに病原性を示す菌糸状の放線菌は、感染様式も真菌(カビ)に似ているため、真性細菌ですが慣例的に真菌学分野で扱われています。病原性のものには嫌気性のアクチノマイセス・イスラエリ(イスラエル放線菌)があり、これによる感染症をいわゆる放線菌症と呼びます。好気性の代表はノカルジア属に属する細菌で、ノカルジア症を引きおこします。他に、放線菌目にはコリネバクテリウム亜目が含まれており、これには結核菌が属するマイコバクテリウム科、ジフテリア菌が属するコリネバクテリウム科が含まれています。ジフテリアについても本項に後述します。
・放線菌症
 口腔内常在菌のイスラエル放線菌によって引きおこされる感染症を放線菌症と呼びます。病原性は低いですが、頭部、胸部、腹部などに感染し、まれに血行性に全身感染をおこすこともあります。頭部では顎の骨のかどや頬に感染巣を作ることが多く、これらを額放線菌症といい、場所によっては口が開きにくくなることがあります。胸部では結核に似た病変を作り、腹部では虫垂や腹膜に感染します。どの位置にできた病変も小さな膿瘍の集合で硬く、悪性腫瘍に似るため、しばしば診断には画像検査や生検が必要になります。感染巣の膿汁を観察できた場合は、菌糸のかたまりである特徴的な黄色のドルーゼを認めることがあります、慢性炎症のため通常発熱は軽度ですが、治療のためには数週間以上の抗菌薬の投与が必要です。
・ノカルジア症
 ノカルジア属に属する菌は、ヒトに感染して、肺に結核に似た病変を作ると肺ノカルジア症、脳膿瘍、髄膜炎を引きおこすと脳ノカルジア症、皮膚に感染すると皮膚ノカルジア症と呼ばれます。土壌中に分布する本菌を吸入したり、傷口への直接接触で感染します。通常は気道感染した肺の病変から血行性に他の臓器に感染、脳膿瘍などが形成されます。肺ノカルジア症、脳ノカルジア症は致命的な感染症ですが、高齢者や免疫力の低下しているものに発生し、通常小児で問題となることはありません。

 まとめ:放線菌は時にヒトに感染して放線菌症、ノカルジア症を引きおこす。抗菌薬による長期の治療が必要となる。

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