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リステリア

 ヒトおよび動物のリステリア症の原因菌で、単球増加が特徴である。ヒトの場合、リステリア菌感染で最も多いのは髄膜炎で、敗血症、脳炎などもある。また、妊婦の子宮内感染は流産や死産を起こすことがある。リステリア菌は健康人、健康動物が保菌していたり、環境中に広く常在している。感染経路には、妊婦から胎児に垂直感染、動物との接触による感染、乳製品などの汚染食品の摂取による感染などがある。通性嫌気性もしくは微好気性グラム陽性小桿菌で、鞭毛をもっている。芽胞、莢膜は作らない。本菌は菌体抗原(O抗原)、鞭毛抗原(H抗原)によって16の血清型に分けられる。ペニシリンをはじめ多くの抗生物質に高い感受性を示す。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 リステリア属には10菌種が属していますが、ヒトに病原性を示すのはリステリア・モノサイトゲネス1種です。リステリア・モノサイトゲネスは、自然界では、野生動物、鳥類、魚類、昆虫の糞便、食品や土壌などに広く分布する常在菌の1種で、冷蔵室内の温度(4℃)でも増殖、6%以上の食塩にも耐えることができます。リステリア・モノサイトゲネスは通性細胞内寄生菌であり、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれた後、エンドソームに穴をあけることによって食菌作用から逃れ、赤痢菌、リケッチアと同じように細胞質内を移動し、隣接する細胞に侵入することによって炎症を引きおこします。莢膜、芽胞は作りません。
 リステリア・モノサイトゲネスは下記のような症状を引きおこします。
・食中毒、リステリア症
 リステリア・モノサイトゲネスは肉類や乳製品、野菜などに存在し、経口摂取によってヒトに感染します。その人の健康状態、摂取菌量などによって発症するまでの潜伏期間はまちまちであり、数時間から1か月程度と幅があります。健常人では発症することはまれですが、何らかの理由で免疫力が低い者、腸内細菌叢が乱れている者などでは食中毒としてリステリア症を発症することがあります。リステリア症は、発熱、筋肉痛、関節痛などのインフルエンザ様症状から始まり、重症になると敗血症、化膿性髄膜炎になることがあります。嘔吐、下痢といった胃腸炎症状が先行して、敗血症などの重症感染症の症状が出現するまで相当日数が開くこともあります。妊婦は健常者に比べ20倍感染しやすいと言われており、感染して数日から数週間で胎児に流産、死産、早産を引きおこすことがあります。胎児に影響が大きいのは妊娠第三期だと考えられています。このような経胎盤感染では乳児敗血症性肉芽腫症を発症していたり、生後早期に敗血症、化膿性髄膜炎をきたすことがあります。化膿性髄膜炎については他項に書きます。

 75℃、1分程度の加熱で死滅します。

 まとめ:リステリア・モノサイトゲネスは食品などを介してリステリア症を引き起こすことがある。食品を加熱することによって予防できる。

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