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ヘリコバクター・ピロリ

 微好気性グラム陰性らせん状桿菌で、極多毛性の鞭毛をもつ。ウレアーゼを産生するのが本菌の特徴である。胃炎・消化性潰瘍患者の胃粘膜から高頻度に分離される。胃潰瘍の原因菌とされていて、胃癌の発生との関わりも報告されている。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 胃の内部は胃液による強酸性のため、以前は細菌が生息できない場所だと考えられていました。しかし、1983年に胃から発見されたらせん状のグラム陰性桿菌は、ウレアーゼという酵素を産生することによって胃液中の尿素からアンモニアを生成、局所的に胃酸を中和することで胃粘膜への定着を可能としていることが分かりました。ヘリコバクター・ピロリと命名されたこの細菌は、胃炎、胃潰瘍の原因菌であり、さらに胃癌との関連が強く考えられています。日本消化器病学会のホームページには、本邦で2800人を8年間追跡した結果、ヘリコバクター・ピロリ感染者の2.9%で胃癌が発生したのに対し、非感染者では1例も認めなかったという報告が紹介されています。ヘリコバクター・ピロリは井戸水、口移しなどから経口的に感染し、12歳未満の小児に特に感染しやすい(大部分は免疫力が未熟な2歳までに感染している)と考えられています。家族にヘリコバクター・ピロリの感染者がいる場合はハイリスクです。保育園など家庭外での感染は全体の2割程度と考えられています。小児期に発見された場合は胃炎、胃癌の発生など感染による影響を早期から防ぐために除菌を検討しますが、同時にご家族様のヘリコバクター・ピロリも除菌しなければ再感染する可能性があるため、患者様からヘリコバクター・ピロリの感染が証明された場合はご両親、ご兄弟を含めたご家族様全員の検査を勧めさせて頂きます。いくつかの検査方法があり、2つを組み合わせて行うほうが検出率が向上します。特に尿素呼気試験と、便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査は簡便な検査で、かつ高い精度で検出することが可能です。ヘリコバクター・ピロリは、特発性血小板減少性紫斑病、慢性蕁麻疹、年長児以降の原因がはっきりしない鉄欠乏性貧血などに関与していることがあり、感染が明らかになった場合は除菌することで改善することがあります。複数の薬剤を併用して除菌します。
 ヘリコバクター・ピロリはサルや、イヌ、ネコなどにも感染することが知られており、他の様々な動物の胃にも他のヘリコバクター属の細菌が分布していることが分かっています。

 まとめ:ヘリコバクター・ピロリは小児期に感染し、胃炎、胃潰瘍、胃癌の原因となる。除菌することによってそれらのリスクを大きく下げることができる。

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