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ブルセラ

 6菌種あり、Brucella melitensis(マルタ熱菌)、B. abortus(ウシ流産菌)、B. suis(ブタ流産菌)が主な菌種である。これらの菌によるブルセラ症は人畜共通感染症で、主にブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、イヌなどの家畜の感染症の原因となる。偏性好気性グラム陰性球桿菌で、芽胞、鞭毛はない。細胞内寄生性で好中球やマクロファージ内で増殖する。ヒトへの感染は感染動物の接触による経皮感染と乳製品などの経口感染とがある。
(医学書院 医学大辞典 一部省略)

 ブルセラ属に属する細菌はそれぞれ遺伝学的な類似性が高いことから、一属一菌種(ブルセラ・メリテンシス)とされていますが、宿主となる動物によってさらに細分類されます。ヒトへの病原性が高い順に、ブルセラ・メリテンシスはヒツジ、ヤギ、ブルセラ・スイスはブタ、ブルセラ・アボルタスはウシ、ブルセラ・カニスはイヌを宿主とします。他に、海洋哺乳類を宿主とするブルセラ・ピニペディアリスとブルセラ・セティもヒトへの感染の報告があります。
 ブルセラ属に属する細菌は下記のような症状を引きおこします。
・ブルセラ症
 ブルセラ属菌は、感染動物の乳やチーズ、肉類の摂取、流産時の汚物への接触、汚染されたエアロゾルの吸入などがヒトへの感染経路になります。エアロゾルを吸入した場合、10から100個の菌で感染すると考えられています。ヒトからヒトへの感染はまれです。潜伏期間は1から3週間ですが、もっと長いこともあります。症状は発熱、頭痛、倦怠感といった非特異的なものですが、関節など全身的な痛みが強いことが特徴だと言われています。発熱は午後から夕方にかけて40℃にいたることもありますが、発汗とともに朝解熱します。適切な治療が行われない場合はこのような発熱が1から5週間程度続いたのち、数日から2週間の症状のない時期をはさみ、再び発熱を繰り返す(波状熱)といったことが数週間から数年におよぶことがあります。波状熱は悪性リンパ腫でも認める(Pel-Ebstein fever)ため、そのような熱型を見た場合には、ブルセラ症が疑われる場合でも病院での精査を勧めさせて頂くことがあります。ブルセラ属菌は全身に拡散するため、他に、肝脾腫や心内膜炎など、男性では精巣炎、精巣上体炎を起こすこともあります。抗菌薬による長期の治療が必要です。

 本邦では家畜のブルセラ症はほぼ撲滅されていますが、イヌのブルセラ症は定着しており、数%が保菌していると考えられています。世界的には決してまれな病気ではなく、海外旅行などでは地域によっては加熱が不充分な生乳、チーズ、アイスクリームの摂取は避けるほうが良いでしょう。

 まとめ:ブルセラ属菌はブルセラ症の原因になる。加熱が不充分な乳製品の摂取を避ける、家畜やイヌの衛生対策をすることによって予防できる。

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