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カンピロバクター

 カンピロバクター属には15菌種知られているが、ヒトに重要なものは3菌種である。最も多いのはC. jejuniによる主として小児の腸炎で、年間を通じて発生する。ごくまれに感染後にギラン-バレー症候群を続発する。小児下痢症の35から40%を占めることもある。ウシ、ヒツジ、ニワトリ、イヌ、ネコなど多くの動物が健康状態で保菌しており、時には大規模食中毒の原因ともなる。C. fetusは人畜共通感染症として人間にも敗血症、髄膜炎、流産などを惹起する。
(医学書院 医学大辞典 一部省略・改変)

 カンピロバクター属に属する細菌はトリや動物の腸管などに広く分布する常在菌で、現在17菌種が知られています。その中でもヒトに感染するのは95%以上がカンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni)で、食中毒の件数ではもっとも多いと言われています。
カンピロバクター属は下記のような症状を引きおこします。
・食中毒
 カンピロバクター属による食中毒は、2から5日程度の潜伏期間ののち発熱、腹痛、下痢、血便、嘔吐といった感染性腸炎の症状を引きおこします。下痢は1日数回から多いと10回以上におよびますが、発熱は38℃台にとどまることが多いとされています。数日で自然治癒することが多いため軽症例では経過観察を行いますが、血便を伴うような重症例では抗菌薬の使用を検討します。低年齢で腸管出血性大腸菌や、赤痢菌感染が疑われる場合には病院の受診を勧めさせて頂きますが、中々臨床症状だけで判断するのは困難です。また、感染しても何も症状が出ない人もいます。
 カンピロバクター属による食中毒はふつう自然と治りますが、1000人にひとり程度に、感染後1から3週間にギラン・バレー症候群を合併することが知られています。ギラン・バレー症候群は四肢末端から運動筋麻痺が進行する自己免疫性疾患で、発症の仕組みとして、カンピロバクターの菌体表面の糖鎖構造と、ヒトの運動神経軸索に含まれるガングリオシドの構造が似ていることが指摘されています。ギラン・バレー症候群の最大の原因はカンピロバクター属の感染だと考えられています。ギラン・バレー症候群については他項に書きます。他に、反応性関節炎(ライター症候群)を合併することがあります。
 カンピロバクター属は500個以下という少ない菌数で感染が成立します。原因食品は鶏肉、牛生レバーがよく報告されますが、生肉、肉類の調理中に二次汚染された野菜なども原因となります。現在の技術では食肉処理の過程でカンピロバクターを100%取り除くのは難しく、生肉はそれなりの確率で汚染されていると考えた方が良いでしょう。また、感染した犬や猫からうつったり、不充分に殺菌された井戸水から感染することもあります。

 カンピロバクター属は低温での生存期間が長く、生肉では-20℃で1ヶ月以上、4℃では3日以上生存することが知られています。鶏卵から検出されないのは乾燥に弱く、酸素にさらされると急速に死滅するためだと考えられています。
 予防のためには食品の加熱が有効で、75℃、1分程度の加熱で死滅します。

 まとめ:カンピロバクターは食中毒の原因となる。よく加熱した食品を摂取することで予防できる。

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