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流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

 ムンプスウイルスは3週間程度の潜伏期間ののち、唾液腺の腫れ、発熱などを引き起こします。これは流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)と呼ばれますが、耳下腺以外の唾液腺が腫れることもあります。両側の耳下腺が腫れると特徴的な顔貌になることから、おたふくかぜの俗称がありますが、片方だけが腫れることもあります。唾液腺の腫れは5から9日間で改善することが多いですが、顎下腺が腫れる場合は長引くこともあり、1ヶ月程度腫れが遷延することもあります。かかっても症状が出ない人が3割程度いると考えられています。感染期間は唾液腺の腫れが出現する3日前から、腫れが出現した7日後程度(欠席は腫れが長引く場合は最長9日間を指示します)までだと言われています。
 合併症は、無菌性髄膜炎が10人にひとり程度見られます。思春期以降の男性では精巣炎に、女性では卵巣炎が生じ虫垂炎に似た腹痛を起こすことがあります。いずれも1週間程度で自然と改善しますが、精巣炎では50%で精巣の部分的萎縮が見られます。不妊にいたることはふつうはないと考えられています。低頻度ですが、唾液腺の腫れを伴わない膵炎が見られることがあります。また、ムンプス感染者の1000人にひとり(近畿外来小児科学研究グループの研究では7,400人中7名、全員がワクチン未接種:国立感染症研究所)が難聴を発症すると言われています。難聴は流行性耳下腺炎発症後の2週間以内に起こることが多く、通常片側ですが、高度難聴の場合はふつう回復することがありません。難聴は流行性耳下腺炎の重症度には関係なくおこり、耳下腺の腫れなどが見られない場合でも発生します。流行性耳下腺炎には特異的な治療法がなく、対症療法がメインとなります。
 流行性耳下腺炎は予防接種で予防できる感染症です。1歳になったら早めの接種を完了し、予防につとめることが勧められます。
 流行性耳下腺炎は学校感染症の第2種に指定されており、唾液腺の腫れが出現した翌日から5日間は通園・登校が認められません。
 耳下腺の腫れは、他にコクサッキーウイルス、パラインフルエンザウイルスなどでも生じ、繰り返す場合は反復性耳下腺炎も考えられます。細菌による化膿性耳下腺炎が疑われる場合には抗菌薬を処方することがあります。

 まとめ:流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、時に難聴など深刻な合併症をきたすことがある。ワクチンでの予防が行われている。

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